【基礎知識】インドネシアのイスラム教

インドネシアの歴史・文化・宗教

「インドネシアには興味あるけど、インドネシアのイスラム教ってどんなものだろう?」

と疑問に感じている方は意外と多いのではないでしょうか。

当エントリーでは、そんな「インドネシアのイスラム教」について、インドネシアで生活し、ムスリムの方々と一緒に仕事をしている筆者が解説していきたいと思います。

イスラム教の基礎知識

イスラム教はキリスト教、ユダヤ教と同じルーツを持ちます。

イスラムとは「帰依する」いう意味を持ち、唯一神アッラーに対して全てを委ねるということです。

7世紀、ムハンマドが神の啓示を受けたとして布教活動を開始します。

ムハンマドはサウジアラビアのメッカを征服し、旅人や商人たちによってイスラム教は世界に広まっていきました。

イスラム教の教義

イスラム教の主な教義

①アッラー以外に神なし

②ムハンマドは神の使徒なり

となっており、ムハンマドの後継者はカリフと呼ばれ、政治・宗教の権利を世襲していきました。

歴代のカリフは領土の拡大に努め、1924年にオスマン帝国の崩壊に伴い、カリフ制は消滅しました。

また、「六信五行」という教義もあります。

読んで字のごとく、六信とは信ずべき六つの信条のことであり、五行とは行うべき五つの義務のことです。

六信

唯一神:アッラー以外に神はないと信じる

天使:アッラーの命令を忠実に実行する天使・ガブリエルとミカエルを信じる

啓典:アッラーから預言者に下された様々な教典を信じる

使徒:ムハンマド等のアッラーから送られた預言者を信じる

終末と来世:死後の世界の存在を信じる

定命:人間の運命はアッラーの定めた天命と信じる

五行

信仰告白:「アッラーのほかに神なし。ムハンマドはその使者である」と唱えて信仰告白をします。

礼拝:日に5回、メッカの方向に向かってお祈りをします。

喜捨:自分の財産を貧しい人に施すことです。

断食:イスラム歴の9月(ラマダン)には断食をします。

巡礼:経済的・体力的に実行可能な方は、一生に一度はメッカへの巡礼が義務付けられています。

イスラムの2大宗派

イスラム教は大きく分けて2つの宗派に分かれています。

約90%のムスリムがスンナ派に属しており、約10%がシーア派となっております。

ちなみに、スンナ派にはサウジアラビアの「ワッハーブ派」、シーア派にはシリアの「アラウィ派」が含まれており、宗派が2つしかないという事ではありません。

スンナ派

ムスリム人口の約90%を占める多数派で、インドネシアの大多数のムスリムもスンナ派に属しております。

コーランやハーディスを信仰の拠り所としています。

スンナ派が主流の国:サウジアラビア、エジプト、トルコ、インドネシア、マレーシア

シーア派

ムスリム人口の約10%を占める少数派でイラン・イラクが中心となっております。

精神的・政治的指導者のイマームが信仰の拠り所となっています。

シーア派が主流の国:イラン、イラク、バーレーン、アゼルバイジャン、シリア(スンナ派が多くを占める国ですが、シーア派を起源に持つアラウィ派が政権を握っています)

インドネシアはイスラム教の国なのか?

国民の大半がムスリムであるインドネシア

このデータを目の当たりにした多くの日本人は「インドネシアはイスラム教の国なのか?」と疑問に思うことでしょう。

この章では、皆様のそんな疑問を解決する手助けとなるように解説していきたいと思います。

世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシア

インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱え、国民の88%がイスラム教を信仰しています。(キリスト教9.3%、ヒンドゥー教1.8%、仏教0.6%、儒教0.1%)

モール内などにはハラル認証のレストランなどが散見されます。

1日に数回、行われるメッカの方角に向かっての礼拝も職場でも行われ、仕事の途中でもお祈りのために居なくなることも日常茶飯事です。

そんなインドネシアは世界最大のイスラム教徒を抱えています。

順位国名イスラム教徒人口
1位インドネシア2億人
2位パキスタン1億7400万人
3位インド1億6000万人
7位イラン7378万人
15位サウジアラビア2495万人

インドネシア憲法から見る宗教観

パンチャシラ

パンチャシラとはインドネシア共和国の国是とされる五原則です

唯一神への信仰

公正で文化的な人道主義

インドネシアの統一

合議制と代議制における英知に導かれた民主主義

インドネシア国民に対する社会的公正

上記の5つのものが規定されています。

この中でも最も重要視されているのが「①唯一神への信仰」です。

インドネシアで最も多いのがイスラム教徒ですが、イスラム教を国教としているわけではありません

イスラム教、キリスト教(カトリック、プロテスタント)、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つの内いずれかを選択しなければなりません。

※インドネシアでは無神論は違法であるため、公言すると逮捕される可能性があります。

ちなみに、筆者がインドネシアでの就労ビザを取得する際にも「どの宗教を信仰しているか」ということを明記する必要がありました。

インドネシアは敬虔な宗教国家といえるでしょう。

インドネシア共和国憲法

インドネシア共和国憲法では以下のように規定されています。

インドネシア共和国憲法 第11章 宗教 第29条

第1項

 国家は唯一神への信仰に基づく。

第2項

 国家は、すべての国民がそれぞれの宗教を有し、その宗教及び信仰に従って礼拝を行う自由を保障する。

つまり、イスラム教、キリスト教(カトリック、プロテスタント)、ヒンドゥー教、仏教、儒教のいずれかを信仰していれば、信仰の自由が保障されていると言えます。

インドネシアへのイスラム教の伝播

14世紀後半になると、マレーシアはクアラルンプールの南に位置するマラッカやインドネシアは南スマトラのパレンバンがイスラム商人との貿易で栄え、イスラム教がじわじわと浸透していきました。

布教者たちは海のシルクロードを渡って渡来したアラビア人・ペルシャ人・インド人・チャム人(ベトナム中部から南部にかけて独自の文化を有する民族。当時はベトナムに栄えたイスラム王国人)・中国人などで、多様な背景を持つ人々によって布教されました。

交易を通じて比較的緩やかに、数百年かけてイスラム教が広まったため、インドネシアは穏健なムスリムが多いという説が一般的です。

イスラム教への誤解

何事もそうなのですが、「イスラムは○○である」という一般化は偏見を生み出す原因となってしまいます。

  • イスラムは男尊女卑
  • イスラムは好戦的
  • イスラムは非寛容

こういった先入観や偏見が無自覚のうちに芽生えてしまっている方々も数多くいると思います。

異論はありますが、2010年の時点でムスリム人口は約16億人(キリスト教に次いで世界2位の信者を抱えている)となっており、世界人口の約23%を占めています。

これだけ多くのムスリムがいれば、中には教義を曲解して過激な行動にでる一部の信者がいてもおかしくはありません。

しかし、忘れないでほしいのが、大多数のムスリムは穏健であるということです。

近年、加速する「イスラム化」

インドネシアでは近年、「イスラム化」が加速しています。

インドネシアでは学校教育においてイスラム教について学んだり、親や親せきから教わったりと、昔からイスラムについての教育はなされてきました。

ところが、1980年代ごろからイスラム色が強くなりはじめ、最近ではその傾向は更に強まっているように感じます。

これまでは学校教育や親による教育を受けた者たちは社会に出ると、その教えをさほど自覚してこなかった中間層の人々が、スマートフォンなどを用いてイスラムの教義などに触れるようになり、意識変化が起こったことなどに起因していると考えられます。

※そして、インドネシアの急速な経済成長に伴い、中間層も拡大しています。

映画や音楽などのポップカルチャーにもイスラムが浸透し「イスラム教はクールなものである」というイメージが広まっています。

それに伴い、LGBTなどの性的マイノリティの方々や未婚カップルの外泊などに対する厳しい目線・法律を変えようとする動きなどが醸成されつつあるのも事実です。

また、アルコールに対する規制も近年、強化されています。

2015年に売り場面積400平方メートル以下の店でのアルコールの販売が禁止されました。

ジャカルタのコンビニではビールすら購入することが出来ません。

もし、アルコールを手に入れたければモール内にある大型スーパーへと足を運ぶ必要があります。

ただ、2019年から2020年にかけての年末年始に旅行で訪れたロンボク島の隣にあるギリ・トラワンガンという島では、小規模な個人経営のお店でもビンタンビールなどが販売されているのを確認しました。

ギリ・トラワンガンのコンビニにあるアルコールコーナー
ギリ・トラワンガンのコンビニにあるアルコールコーナー

この島は欧米人の観光客で溢れかえっておりアルコールの需要があるのと、警察が常駐していないことも相まって、かなり自由な雰囲気でした。

また、インドネシアではネット規制も行われており、成人向けコンテンツへの接続は遮断されています。

こういったところからも如何にインドネシアの日常生活にイスラム教が浸透しているかが分かります。

以下はインドネシアのネット規制と対策について詳しく書いてあるものなので、興味のある方は読んでみてください。

東南アジア最大のイスティクラル・モスク(ジャカルタ)

イスティクラルモスクの写真
イスティクラル・モスク

インドネシアのジャカルタには東南アジア最大のモスク「イスティクラル・モスク」があります。

1961年に建設が始まり、17年もの歳月をかけて1978年に完成した超巨大イスラム教礼拝堂です。

ムスリムが礼拝する1Fを除き、他すべての場所を見て回ることが出来ます。

午前4時から午後6時まで入場可能なので、ジャカルタを訪れる予定のある方は、「イスティクラル・モスク」まで足を運んでみるのもよいかもしれません。

ちなみに、ジャカルタ最大の観光名所と言われているモナスのすぐ近くにあるため、立地も抜群です。

まとめ

当エントリーでは、おおまかにインドネシアのイスラム教について解説していきました。

近年ではインドネシアのイスラム化が目立ちますが、独立以来、死守してきたパンチャシラに反してまでイスラム教を国教にしようだとか、マイノリティである他宗教を迫害しようなどという可能性は限りなく0に近いと思われます。

約300の民族から構成され、700以上の言語を内包する多民族国家のインドネシアは、イスラム化が進もうとも、他宗教とどこかで折り合いをつけて上手くやっていけると思います。

コメント

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