巷では「インドネシアの物価は安い」「東南アジアなら月5万円で生活できる」などといった情報が飛び交い、フリーランスエンジニアやブロガーなどのノマドワーカーの方々が海外移住(主に物価が安いと言われている国々)を志したり、実際に移住して活動されている方々が数多く散見されます。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
私はノマドワーカーではありませんが、実際にジャカルタに移住して半年ほど経ちます。そして、その経験則から申し上げると対クオリティで考えるとそこまで安くは感じません。
人によってお金の使いどころが異なり、また、お金を用いた幸福追求のベクトルとそれに対する費用対効果など「もはや、そんな統計データ取ることが出来ない」という次元の話になってくるので、 一概には結論を出すことは出来ないという事は重々承知したうえで出来るだけ具体例を交えながらお話していきます。
インドネシア及びジャカルタの平均月収
インドネシア人の平均月収は2020年1月の最新情報によると183USDとなっており、これを日本円に換算すると20033円(2020年1月11日のレート)となります。ソース
JETROによるとジャカルタ特別州の2020年の月額最低賃金は約427万6000ルピアとなる見込みで、これは日本円に換算すると34026円 (2020年1月11日のレート) になります。ソース
つまり、ジャカルタの最低賃金がインドネシア全体の平均月収を上回っているのです。
諸説ありますが、ジャカルタで働くインドネシア人の大まかな平均月収は4万円から8万円くらいと言われております。
インドネシア国内における地方と都市の賃金格差は凄まじいですが、もちろんジャカルタ首都圏内も同じことで、一部の富裕層が大きく平均値を釣り上げているため、平均月収は所謂「普通の人」を指示している訳ではなく、実態とは少し異なっています。
ジャカルタも少し外れの方に行けば、その日暮らしの方々も多く散見されます。
ただ、一つ言えることは、ジャカルタの物価や生活コストを語るうえで、他のインドネシアの地方都市とは切り離して考えなければならないということです。
そして、ジャカルタに外国人として滞在するには、実際にインドネシア人全体の平均月収を釣り上げている現地の富裕層に寄せた生活を余儀なくされる面が多々あるのです。
理由は後ほど
ジャカルタの物価①食事
まずはインドネシアでの食事事情についてお話していきたいと思います。
インドネシア料理といえば、「ナシゴレン」「ミーアヤム」「サテアヤム」などが有名ですが、インドネシア在住日本人の間でもローカルフードはかなり好き嫌いがハッキリでます。
極端に辛いものと極端に甘いものを好んで食べるインドネシア人、日本料理に慣れ親しんでいる我々からすると、少し刺激的に感じるかもしれません。
私もジャカルタに移住した当初は探求心が芽生え、次々と目新しいインドネシア料理(ストリートフードを含め)にチャレンジしていましたが、2ケ月も経つと日本料理が恋しくなり、また、体調不良などが続いたことから外資のレストランやモール内での食事回数が増えていきました。
それに伴い食費の支出も増えていきました。
庶民料理:屋台は激安
まずは屋台についてお話していきたいと思います。
屋台といっても比較的、衛生管理がなされている店舗型のワルンや、衛生面に不安がありそうな屋台や移動式屋台などピンからキリまであります。
店舗型屋台(ワルン)
ワルンはインドネシアの庶民的なレストランの代表格です。
こちらはピンキリで、いつも大繁盛している名店もあれば、お粗末なお店もあります。
日本人の衛星管理の基準を超えているかと問われれば、それは怪しいですがインドネシアや東南アジア慣れしている方々の間では積極的に利用されている方も多いです。
安いところだと300円ちょっと、高いところだと5-700円ほどでお腹一杯になれます。
屋台
ここで定義する「屋台」とは、歩道を占拠して簡易的なテントを貼ってテーブルや椅子が置かれている形式のものを指します。
この屋台形式のお店は衛星管理状態などはピンからキリまでありますが、大方の店舗は台所スペースがなく、それが何を意味するかというと、つまり手や食器を洗う場所が確保されていないということになります。
あらかじめバケツに溜めておいた水で食器洗いを済ませていますが、食事そのものというよりも「食器によって食あたりを起こす」ということも十分に考えられます。
筆者は大きなネズミが走り回っている道路わきで、屋台の方がバケツの水で食器を洗っている光景を目にしました。
100-500円でお腹一杯食べられます。
移動式屋台(カキリマ)
移動式屋台(カキリマ)は押し車式の小さい屋台で、道路沿いに乱立しています。
こちらも上記の屋台と同じで台所スペースがなく、衛生管理面での問題があると考えられます。
100-300円でお腹一杯食べられます。
日本食や外資レストランは日本と同等
日本食レストラン含む外資レストランは基本的に値段が日本と大差ありません。
例えばグランドインドネシアやセントラルパークモール内にあるラーメン屋・一風堂はラーメン、サラダ、お茶を頼むと大体1500円ほどかかります。
新興国だからといって日本や欧米のクオリティをそのまま輸入している飲食店は、同程度の価格設定となってしまうのも仕方のないことでしょう。
しかし、モール内のフードコートは庶民的な値段設定がなされており、かつ、衛生面にも問題がないため、安く安全に食事を済ませたい方にはオススメです。
旅行でインドネシアを訪れる方は短い滞在期間を良き思い出とするためにも、食事に関しては極力、モール内やレストラン、ファーストフード店で済ませることをオススメしております。
コラム:多くのインドネシア人は生野菜を殆ど食べない?
インドネシアに来て、現地の友人らとローカルフードを楽しむようになってから、まず最初に驚いたのが「生野菜を殆ど食べない」ということです。
ワルンなどに赴いてメニューを眺めてもガドガド(サラダのピーナッツソースあえ)を取り扱っていない店であれば、生野菜は皆無です。
ただし、野菜を炒めたものであればカンクン(空心菜の中華風炒め)、チャプチャイ(中国風の野菜炒め)などがあります。
ジャカルタの物価②交通費
ジャカルタやインドネシアの主要都市ではmacet(マチェット)と呼ばれる世界最悪とも言われるほどの交通渋滞があります。
その緩和策として近年ではMRTやTransjakartaといった公共交通機関なども発達しつつあります。
公共交通機関はいずれも格安で利用できますが、利便性においては今一つです。
タクシー
タクシーに関してはどこの国にもあるので説明するまでもないと思いますが、インドネシア特有の難しさがあるので、そこは押さえておきたいところです。
インドネシアでは流しのタクシーを捕まえて利用すると、多くの場合は交渉によって料金が決まりますが、日本人観光客の場合は高確率で相場よりも高い値段設定がなされます。
ですので、インドネシアでタクシーを利用する場合は安心安全で名高いブルーバードグループの利用をオススメします。
ホテルやモールなどでレセプションに頼めばブルーバードグループのタクシーを呼んでいただけます。
基本的には日本の1/5程度の料金で利用することが可能です。
Grab・Gojek
GrabやGojekとは C to C の自動車配車アプリです。
これらはスマホの位置情報と行き先を選定すれば自動で料金が表示され、非常に明瞭な料金体系となっております。
また、GrabならOVO、GojekならGopayといった電子マネーを用いれば、お釣りをチップとしてドライバーに渡す必要もなくなります。
上記で紹介したタクシーより100-300円ほど安いといった感じでしょうか。
MRT
こちらは2019年3月に開業したばかりのMRTです。
北は中央ジャカルタのグランドインドネシア近くのBundaran H.I.から、南ジャカルタのLebak Bulus Grabまでありますが、初乗りが40円しないくらいで、最高でも120円ちょっとで利用出来ます。
ちなみに、2024年にはファタヒラ広場など多くの観光地を抱えるジャカルタ・コタ駅まで開通予定となっております。
Transjakarta
バスは道路中央に作られた専用のレーンを走って渋滞の影響をあまり受けずに利用できるのがTransjakartaの特徴です。
市内を東西南北に走っており、マスターすれば安くジャカルタ市内を移動することが可能になります。
こちらは料金一律で、どこまで行っても約30円ほどで済みます。
KRL
KRLとは正式名称、KRL Commuter Lineと呼ばれ、インドネシアの首都圏であるジャボデタベック(JA:ジャカルタ・BO:ボゴール・DE:デポック・TA:タンゲラン・BEK:ブカシの略称)を走る鉄道です。
初乗りは約25円と格安ですが、実際に乗ってみた感想としては、この列車は完全にローカル向けであり、外国人の客は想定していないものだと思われます。
インドネシア語が分からないと乗り換えなども難しい上、非常に時間がかかる(電車の運転間隔が広い、そもそものスピードが遅い)ので観光にはオススメ出来ません。
コラム:多くのインドネシア人は歩くのが大嫌い?
インドネシアで現地の方々と交流し始めて驚いたのが、インドネシア人はとにかく歩きたがらない。
インドネシアは歩道が整備されていない所が多く、赤道直下で暑いため歩きたくなくなるのも分かりますが、100メートルちょっとの移動でもバイクを用いる人も多いです。
ジャカルタの物価③7-8万円でプール&ジム付きのアパートに住める
ジャカルタの住居費は非常に安く抑えられます。
月に7-8万円ほど払えば、かなり良いアパートメントに住むことが可能です。
ただ、アパートメント住みの現地の友人らに聞いてみると、もっと安く抑えられているようです。
アパートメントの他にもコスと呼ばれる安アパートなども存在します。(とはいえ、高額なコスはサービスアパートメントにも匹敵する設備を備えています)
コスであれば凡そ3-5万円で済ませることが可能です。
コラム:郊外なら4万円のアパートメント物件も?
現地のアパートメント住みの友人に聞くとジャカルタでも少し外れに行けば4万円などで借りることが出来るようで、その友人はルームシェアをして4万円ほどのしっかりしたアパートメントに住んでいました。
コラム②:ジャカルタ在住の独身インドネシア人は実家暮らしとルームシェアが多い
インドネシアの方々は家族関係が非常に良好で実家暮らしの方が多いです。また、友人とルームシェアしたり、コスなどでも近隣住民と上手くやっている印象です。
筆者のように20代でアパートメントに一人暮らししているインドネシア人の方はごく少数です。
ジャカルタの物価④携帯料金は月に1000円ほど
筆者はTELKOMSELというインドネシア最大手の通信キャリアを利用していますが、こちらは支払いがプリペイド方式で、私の場合は約1500円ほど払い1か月50ギガバイトのパッケージを利用しています。
あまりスマートフォンを使わない方であれば、5ギガバイトの500円ほどのパッケージでも1か月は持つと思われます。
VPNの必要性
インドネシアはネット規制があるため成人コンテンツなどを利用することが出来ません。
その他にも、 TVer(民放のテレビ番組の見逃し配信を行っているサービス)などの各種ビデオ・ストリーミング・プラットフォーム やメルカリでの購入、VPN規制のあるオンラインゲームなどは利用出来なくなります。
インドネシアで日本と同じインターネット環境を楽しみたいのであればVPNは必要不可欠です。
無料のVPNも存在しますが、接続が不安定で非常に使い勝手が悪い上、個人情報の漏洩や、パソコンで利用される場合はウイルスに感染する可能性があるので、有料のVPNを使用するほうが賢明です。
有料のVPNですとセカイVPN がオススメです。
こちらは海外在住の日本人に人気のサービスとなっております。
月額は1100円ですが、日本の会社だけあって対応もジャパニーズクオリティです。
関連記事:【ネット規制対策】インドネシア在住者がVPNを利用する理由とオススメのサービス
ジャカルタの物価⑤航空券
ジャカルタ(正確にはその隣にあるタンゲラン)のスカルノハッタ国際空港はインドネシア最大の空港で国内線・国際線を問わず数多くの飛行機が頻繁に発着しています。
ジャカルタ在住の方であればインドネシア国内の各都市、海外へのアクセスは非常にいいです。
ジャカルタからシンガポールやクアラルンプールまで約3000円
ジャカルタからインドネシア周辺にある東南アジアの都市へは非常に安くアクセスすることが可能です。
時期や航空券購入のタイミングにもよりますが、平均すると片道3000円ほどでチケットを買うことが出来ます。
シンガポールやクアラルンプールであれば3連休を活用して遊びに行くことも可能です。
ジャカルタからバリ島まで約5000円
国内線は国際線に比べて少し高く付きますが、それでも5000円ほどでバリ島までの片道航空券を購入することが出来ます。
ジャカルタの物価⑥お酒は日本より圧倒的に高い
インドネシアはお酒好きの方には非常に高くつきます。
酒類はビールやスミノフなどの度数の低いものを除くと、平均して日本の約3倍程度の価格帯となります。
もっと言えば、酒を手に入れることが難しい地域もあります。
特に顕著なのが、厳格なイスラム教徒が大多数を占める地域であるスマトラ島の最北端に位置するアチェ州。
ここではアルコールを販売した女性が公開むち打ち刑に処された程で、飲酒は諦めたほうが賢明です。
また、ジャカルタでも酒類をコンビニなどで販売することは禁じられており、大型のスーパーまで買いに行くか、バーやレストランで飲む以外に選択肢はありません。
宅飲み
宅飲みは日本と同様、バーやレストランで飲むよりかは安くつきますが、それでも度数の高い酒類を手に入れようとすると高くつきます。
例えば、日本でも人気なウイスキーの銘柄であるジャックダニエル、こちらは約10000円で販売されていますが、日本であれば2000円ちょっとで購入できます。
他にも例を挙げると、響という日本産のウイスキーがありますが、こちらは日本で購入すれば5000円ほどですが、インドネシアだと約30000円します。
ただし、ビンタンビールやバリハイなどのインドネシア産のビールは、日本でビールを購入するのと同程度の金額で済みます。
また、前述の通り、スミノフも安く購入することが出来、だいたい200円弱で済みます。
バー・レストラン
バーやレストランであれば、ビンタンビールの小瓶が300円から700円ほどで楽しめます。
しかし、カクテルは1000円以上、グラスワインであれば一番安いものでも1500円以上します。
非常に高くつきますね。
日本人学校は高くつく
独身の方や単身赴任の方には関係ありません。
しかし、インドネシア人と結婚された方や家族も帯同された方は他人ごとではありません。
子供を日本人学校に入れたい場合には高くつきます。
ジャカルタの物価統計情報
英語での情報となってしまいますが、Cost of Living Indonesiaというサイトに物価統計情報が詳しく記載されております。
こちらのサイトによると「インドネシアの生活費はアメリカ合衆国よりも48.13%低くなっており、家賃は73.93%低くなっている」と書かれています。
これらは過去18か月間、911人による8790のデータを参考としたものになっているため、サンプル数も十分にあります。
さいごに
結局のところ、あなたがインドネシアで生活するにあたって、どこに重きを置くか?によって、どの程度の支出が必要なのか大きく変わってきます。
日本食やアルコール類を好む筆者の場合は、日本にいた頃よりも飲食・交際費が大幅に上がってしまいました。
そして、家賃は日本にいた頃とは変わりませんが、その代わりにジャカルタのアパートメントの高層階に住むことが出来ています。
「ジャカルタないしはインドネシアに移住した際には毎月どのくらいの出費がかかるのか」というあなたなりの答えを導き出すための具体例をいくつか挙げたので、参考になれば幸いです。
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